English version is here
アメリカ出身のエリカとスコットランド出身のスコットが、大阪・福島にオープンしたカフェ FOLK SAKA。
FOLK SAKA の SAKA は大阪の「サカ」と「茶菓」をもじったもの。
そんな大阪愛が溢れるふたりが、8年間住んだ大阪で見つけた古い民家を改修し、ずっと夢だった自分たちのお店をオープンしました。
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スコット:スコットランド出身。オーストラリアで会計士になった後、シェフの道へ。
これまで住んだ国はイギリス、イタリア、スコットランド、オーストラリアなど。大阪在住8年目、大阪が人生で一番長く住んだ場所になった。
エリカ:アメリカ・アトランタ出身。日本には子ども時代に2回ほど訪れただけ。本当は広島に住みたかったけど、仕事の関係で大阪を選んだら運命の出会いもあり、現在大阪在住8年目。
カフェでお客さんを迎えてくれるほか、日本語と英語で発信するSNSの更新やデザインなどのクリエイティブも担当している。
日本で外国出身の人がお店をオープンする時、実は、ビジネスパートナーに日本人がいる場合がほとんど。その理由は、日本の商習慣が独特で学ぶのが大変だったり、日本語の書類手続きがローカルでない人にとってハードルが高すぎるから。
もともと日本語がネイティブではなく、来日した当時は日本語もほとんどわからなかったというエリカとスコットの2人。自分たちの会社を登記してカフェの開店に至るまで、さまざまな努力をしてきたと思う。
日本の役所の書類手続きやハンコのプロセスはややこしいことが多く、日本語がネイティブの私でさえ、必ずといっていいほど頭を抱えるのに…😥(欧米には日本のようなハンコの概念はない)
なにより、毎日のSNS更新(@folksaka)を日本語でやってるのがすごい!!
日本全体を見渡してもとても珍しい、日本出身じゃないチームで作った自分たちのお店。 アメリカとスコットランド、まったく違う国から来て、大阪で出会い、自分たちの場所をクリエイトした2人に話を聞きました🥳
ー 日本には色々な都市や地域があるけど、2人はなぜ大阪に?
スコット:気分転換がしたくて、はじめは軽い気持ちでふらっと来たよ (笑)
実は、以前はオーストラリアで会計士をしてたんだ。
親の仕事の関係でオーストラリアで子ども時代を過ごし、大学も卒業した。そのまま、運良くすぐに会計士の仕事にもつけた。世間的には狭き門といわれる職種だし、待遇も良いし、文句のない環境のはずだった。でも、どんなに頑張っても、会計士の仕事だけでは自分の気持ちがどこか満たされないと気づいたんだ。
デスク仕事よりも自分は人と関わるのが好きだと気づいて、会計士の仕事を辞めた。
そして、以前から好きだった料理を極めようと、シェフになることにしたんだ。オーストラリアから始まって、イタリアやスコットランドのレストランでも働いたよ。
旅をしながら色々な国のレストランで5〜6年働いた後、少し息抜きがしたくなって、全然カルチャーの違う日本に行ってみようと思ったんだ。
ー 会計士からシェフ、そしてヨーロッパ巡りからの日本…と、スコットはずいぶん急な変化が好きだね (笑)
難関の会計士の仕事を手放す決断は簡単ではなかったと思うし、住み慣れた西洋のカルチャーから飛び出すのも勇気が必要だったと思う。現在は大阪に8年住んでいるけど、始めからこんなに長く住む予定だったの?
スコット:いや、日本は、息抜きのつもりで初めは1年だけの予定だった。
でも、実際に引っ越してみたら、同じアパート棟に住むエリカと出会って。それで大阪がどんどん楽しくなって、エリカと結婚して今に至る(笑)
ー え!ご近所の出会い!それはかわいいストーリー🥰 エリカはなぜ大阪に?
エリカ:私の母が日本の広島出身で、子どもの時に2度くらい広島に祖父母の家を訪れたことがあって。自分のルーツを探りたくて、広島に住んでみたいと思っていたの。
でも、広島には仕事がなくて…。それで、広島に近くて仕事のある大阪に住むことに。実は、大阪は実際に引っ越すまで一度も訪れたことがなくて。当時はまさかこんなに長く大阪に住むとは思ってなかった。
私の母は、18歳でイギリスに引っ越して、そのまま日本に戻らずアメリカで暮らしている人。その姿が「すごくかっこいいな」と憧れていて、私も母と同じような道を歩んでみたいと思った。だから私もイギリスの大学に留学もして、次は母とは逆に日本だなって思って。
母が日本出身とはいえ家庭でもずっと英語で話していたから、大阪に来た当初、日本語はほぼわからなかったの。
ー ふたりとも、初めは軽い気持ちで大阪に来たんだね。英語圏とは日本のカルチャーや言語も全然違うけど、大阪の住み心地はどう?
エリカ:最高!エネルギッシュで活気があって、もう大阪以外の都市には住みたくないと思うくらい気に入ってる。
スコット:大阪は人があたたかくていいね。これまでにロンドンやシドニーといった世界的な大都市にも住んだけど、色々な物事が同時進行していて……。住むなら、大阪のようなサイズの場所の方が、生活のリズムは作りやすいと思った。
僕はスコットランド出身で、エリカはアメリカ出身。どちらの故郷も離れているけど、大阪はその中間にあって。いまや大阪は僕らが一番居心地の良いホームだと感じてるよ。
特に、FOLK SAKAのある大阪・福島のエリアはローカルの人たちがフレンドリーで。お店をOPENした時には想定していなかったんだけど、60~80代くらいの方が毎朝コーヒーを買いに立ち寄ってくれたり、家族全員を連れてお店に来てくれたり。
エリカ:この前はローカルの方から「メニューの字が小さくて読みづらい」ってツッコミが入って(笑)高齢の方でも読みやすい大きさのメニュー表示に変えるところ。
こうしてローカルの人たちともフレンドリーな関係ができたのは、下町情緒あふれる福島ならではだと思うし、嬉しい発見。
ー ローカルに迎え入れられている感じがするね。エリカとスコットの人柄もあってこそだと思うけど、大阪の土地柄も関係ありそう。
FOLK SAKAのムードはこんな感じ🥳 聴きながらインタビューの続きをどうぞ。
私は関東出身で東京の街を見てきた時間が長いんだけど、東京に住む外国人は、孤独や人との距離感を感じてる人もそこそこ多い印象。東京はお店の数も競争も多いから、ローカルな日本人でさえも「お店に通う」の頻度や愛着の度合いが地方とは違うし。
人との距離感が近かったり、はっきり言語化する大阪人の良いところがふたりの人柄にフィットした感じだね。大阪は地理的にどう?
エリカ:私たちはハイキングが好きで、休日によく山に行くの。
大阪は電車で1時間ほど行けば色々な山にも行けて、自然と都市の距離感も気に入ってる。
日本はハイキングルートもよく手入れされているし、美しい山も多いの。
確かに…!例えば、アメリカにも大きな山はあるけど、行くまでに何時間もドライブしなくちゃいけなかったり、国土が広いから出かけるのにかなり気合いが必要だよね。
日本は、コンパクトな国土に自然も都市も詰まってる。日本の山の美しさは、以前インタビューした東京在住の Curtis も話してたなー。
ところで、FOLK SAKA の店舗をオープンするまでに4年もPOP-UPをしていたけど、それはどうやって始まったの?
エリカ:たぶん、初めはスコットが私をデートに誘う口実だったと思う(笑)
デートで食べ歩きをしていた時に、豆乳でできたソイティラミスを食べて。「これ、自分で作れるかも!」「じゃ、お店を出してみよっか!」…という軽い会話から始まったの。
2019年にPOP-UPをスタートして、大阪を中心に関西各地で週末マーケットで出店していたの。その時は、まだふたりともフルタイムの仕事をしていて、FOLK SAKAは週末のアクティビティだった。
コロナ禍のPOP-UP 😷
始めたばかりの頃は、マーケット出店に使う大きな荷物を持ってタクシーに乗ろうとしたら、運転手さんに「ダメダメ!」と怒られたりして…。
慣れるまで大変だったけど、出店したら色々なお客さんが私たちのブースに来てくれて。気づいたら、次も、また次も…と通ってくれるリピーターのお客さんも増えた。
それで、本格的にお店を出してみようと。
スコット:それで物件探しをするようになったんだけど、なかなかいい場所が見つからなくて。
エリカ:中津、中崎町、天六…。大阪のありとあらゆるエリアをふたりで探したけど、どこも家賃がすごく高くて。梅田とかなんばといった中心街じゃないのに、手が届かなかった。あと、雰囲気もいまいちしっくりこなくて。
スコット:ああでもない、こうでもない…と色々な場所を長い間探し続けた。そして、大阪・福島にあるこの物件を見に来た時、一瞬で「これだ!」とビビッときたんだ。
エリカ:この物件に来た時、2人とも同じ意見だったよね。古い建物だったけど、その分、リノベーションして自由に作る余地がある。
スコット:そうそう。不思議な話なんだけど、この物件を見た時に一瞬でお店を出す決意が固まって、2人ともフルタイムの仕事を辞めた。
ー 2人の直感で「いいな」と感じたのが今のお店の場所だったんだね。
それから、クラウドファンディングでお店作りの資金を集めた。当時の動画なども見たけど、ここは欧米カルチャー出身のふたりのいいところがよく表れていて、PRやまわりを巻き込むのがすごく上手だなって感じたなー。
改修前のお店の様子もチラリ🏡クラウドファンディングのPR動画は2人らしさがよく表れてる。PLAYから再生してね
エリカ:クラウドファンディングは、本当にいろんな人が応援してくれて。友人や家族、常連のお客さんたちはもちろん、WebサイトやSNSを通じて私たちを見つけてくれた人たちもいた。
スコット:嬉しい驚きだったのは、しばらく連絡をとっていなかった友人たちともクラウドファンディングをきっかけにまた繋がれたことかな。
どこで僕らの近況を知ったの?という人たちも含めて、色々な人たちが応援してくれた。
ー siesta magazineのコンセプトもそうなんだけど…。リアルな誰かの夢を応援するのって、実は応援する側も楽しくて、夢が叶えば自分のことのように嬉しい。テレビドラマを見ているよりも、熱が入るし。
そして「応援したい」と多くの人に思ってもらえるのは、ふたりの人柄だよね。
実際にカフェを開店させるまでに、大変だったことは?
スコット:書類や会計といった実務は僕がやってるんだけど、母国語ではない日本の書類作業は本当に大変!!
エリカ:役所に何度も足を運んだりして、登記まで時間もかかった。
スコット:でも不思議と、何も言わなくても、僕ら2人の間では自然と担当が分かれていてバランスが取れてる。書類などの実務とシェフは僕の担当で、写真やデザイン、SNSなどのクリエイティブはエリカが担当。自然とそうなったんだ。
エリカ:元会計士が身内にいるのは本当に助かる。もちろんキッチンはスコットに任せてるよ。私たちの違いがうまく活かされてる感じ。
POP-UP時代が一番大変で、カフェ開店前のリノベーションとか大変なことは一通り終わって、今はやっと自分たちのスペースでリラックスできてるよ。
ー 私がFOLK SAKAに行った時、常連さんと思しき2人の男性が、テーブルいっぱいにカードゲームを並べていたのが強烈に記憶に残ってる。英語がネイティブの男性と、英語が上手なおそらく日本人の男性が、お店の片隅でずっとカードゲームで対戦してて。しかも全然終わる気配がなくて、手元にさらに10種類くらいのカードを大箱で持ってた。これは1日中やる気だな、と(笑)
親戚の家に遊びに来たように、くつろいでいる彼らの姿が印象的だったな。
で、FOLK SAKAはイースト・ロンドンのような… 海外のクリエイティブな街に似た時間が流れているな、と思ったよ。
エリカ・スコット:あ!あの常連さんのことかな。彼らは実は、県外から電車でわざわざ来てるんだよ。
ー え‼️それはすごい❗️まさに親戚の家に遊びに来てる感覚。きっとFOLK SAKAが落ち着くんだね。
国籍や背景問わず、すべての人に親しみやすく、どこか懐かしいというFOLK SAKAのコンセプト通りになってる。
【FOLK SAKAのコンセプト】
店名のFOLKという言葉には「人々」と「さまざまな国の伝統的な文化」という2つの意味が込められている。あらゆる人に親しみやすく、どこか懐かしい。そしてさまざまな文化に触れるきっかけになりたい、というのがコンセプト。
だから、日本の古い民家がイメージにぴったりだったし、日本の旬の食材もふんだんに使う。
だから、あらゆる人に食事を楽しんでもらえるように、ヴィーガン・グルテンフリーを専門にした。当初はヴィーガン・グルテンフリー専門店ではなかったけど、アレルギーや食の多様性がある人すべてに食べてもらいたいという想いから。
ー これからFOLK SAKAをどんな場所にしていきたい?
スコット:この常連さんがいい例で、国籍やバックグラウンド……たくさんの違うタイプの人を迎えて、みんながリラックスできる温かい場所にしていきたい。
エリカ:そうね。そして季節の素材をふんだんに使った私たちのメニューで、より健康的に、心もカラダもリラックスしてほしいな。
エリカとスコット、まるでふたりのパートナーシップを映し出すように、穏やかで温かい空間のFOLK SAKA。独立するまで4年という時間をかけたように、じっくりと着実に、地に足がついた雰囲気が印象的でした。
じっくり時間をかけて作ったFOLK SAKAのメニューには、より多くの人に喜んでもらいたいという想いと沢山のこだわりが詰まってる。
国境を超えて出会い、自然な流れでできた FOLK SAKA。ふたりのハッピーが詰まった空間に、ぜひみんなも立ち寄ってみてね。
FOLK 茶菓 Cafe + Bakery(FOLK SAKA)
Instagram @folksaka
大阪府大阪市福島区福島1-6-29
Open hours 10:00-18:00(月・火), 10:00-19:00(金〜日)
Closed 水・木
by Scott & Erica Watson
さまざまな文化や多様性をもつ、すべての人たちへ。
気軽に遊びにきてね☺️🌼