ドイツ、ベルリン在住の Jonephine(ジョセフィン)は、Addidas, Adobe, Coca-cola, X-box, Tik tokなど世界中で誰かが一度は聞いたことあるようなクライアントを持つアーティスト。
カラフルな色使い、はっきりしたレイアウトとダイナミックなサイズの作品が得意で、iPadで描くデジタル・イラストレーションを中心に世界を舞台に活動しています。
実は、Josephineは子どもの頃から日本のアニメが好きで(ドイツのテレビでは日本のアニメが放映されている)、長年日本旅行を夢見ていたそう。
1ヶ月間の休暇を取って念願の初めての日本旅行を叶えた彼女に、今回渋谷で会うことができました。
伝統と景観を守るヨーロッパとは対照的に、近未来的なビルと昭和でカオスなシーンが混在する渋谷で色々話を聞いたよ。
Josephine Rais(ジョセフィン・ライス)
職業:アーティスト
得意分野:デジタル・イラストレーション
年齢:32歳
出身地とその後:ドイツ南部 → アメリカ・オハイオ →ドイツ南部 → ドイツ・ベルリン
現在の住まい:ドイツ・ベルリン
日本で気に入った食べ物:唐揚げ(肉を使わない、ベジタリアン・バージョン)
ー 今日はインタビューに参加してくれてありがとう!siesta magazineでは、普段、海外の人と深く話す機会がない日本の読者さんも、世界のいろんな人がどんなことを考えているのか知れるよう日本語で記事を書いてるよ。日本は島国だから英語が話せない人も多いし、海外に行ったことがない人もけっこういるから何かの架け橋になれればと思ってて。
Josephineはなんで日本に興味を持ったの?
子どもの頃にテレビで放送されていた日本のアニメが大好きで。6歳くらいの頃、「アルプスの少女 ハイジ」を見たのがきっかけかな。
Image from アマゾン
色の使い方、細部にこだわった描き方、ストーリー展開が面白くて、それからどんどんはまっていった。
うちはテレビのルールが厳しくて、1日に30分しかテレビを見ちゃダメと親に言われてた。その30分を全部ハイジを見るために使ってたよ(笑)。ドイツではアニメはドイツ語に吹き替えられているから、当時は日本から来たアニメだとは気づかなかった。
日本のアニメはストーリー展開が意外で面白いよね。特に最近のアニメに言えるんだけど、ずっと見ていた主人公のグループが急に全員いなくなっちゃったり、欧米の常識ではありえない突然の展開に意表をつかれてクセになる(笑)。
ー 突然の展開(笑)。欧米にはないものを日本のアニメの中に見つけてはまっていったんだね。
次はJosephineの作品について。いつも明るくてはっきりした色が作品に使われているけど、色はJosephineにとってどんな意味があるの?
実は、ドイツの大学でデザインを学んでいたときは、あまり色を使っていなかったの。 先生が白黒を勧めていたのもあって、モノトーンばかり。
でも、どこか物足りない気はしてた。
私は昔から色で溢れたイラストや漫画、アニメが大好きだったのも関係していると思う。
ドイツ南部の大学でデザインを学んで、途中アメリカに留学して、それからベルリンに引っ越して…。途中、違和感を感じていた時期もあるんだけど、ベルリンに引っ越して、やっと自分らしい生き方が見つかった気がした。こうなりたかったんだ!という自分になれたのがベルリンという場所。
ベルリンはドイツの中でも異質なくらい活気があってカラフルな場所。
私にとってのカラフルとは、街で見かけるさまざまなストリートアートでもあり、色々な国籍・文化を持つバラエティーに富んだ人たちのことでもある。
*siesta注:ベルリンは、日本で例えると渋谷のような国際都市。アーティストやクリエイターも多く、色々な国から引っ越してきた人で溢れている。
ベルリンに引っ越したこともきっかけで、2015年ごろから自分らしさを表現するためにカラフルな色を作品に使うようになったよ。
私がアートにつかう「色」は、ベルリンで出会う人みたいな「多様性」も意味してる。多様性をひとつの作品の中で表現するのは、チャレンジでもあるし、またそのチャレンジが楽しい。
ー 色は多様性の象徴!素敵 🥳🌈✨
でも、初めは色を使うことにかなりビビってて、パステルカラーとかアースカラーみたいなちょっと抑え気味の色を使ってた(笑)。
時間が経つにつれて色を使うことにも慣れ、色遣いも大胆になっていった。今のようなビビッドで明るくて、力強い色が私のスタイルになったよ。
私はアートを通じて自分の考えを世界に伝えようとしているの。私は自分の意見をしっかり持っているから、それをちゃんと世界に伝えたい。私の作品を見た人に私の言いたいことがしっかり伝わるよう、強くてはっきりした色を使うことが大事だと思ってるよ。
ー 大胆な色遣いは、自分の意見をはっきり伝えたいという姿勢の表れなんだね。
そう。私は陽気でポジティブなメッセージを伝えたいから、明るい色を使ってる。あと、私の作品を見た人にも明るくてハッピーな気持ちになってほしいしね。
自分らしさを抑え込まずに、もっと表現するようになってからは、色々なクライアントから仕事のオファーも増えていった。
ー スニーカーストアの大きな壁画、南アフリカの住宅群の壁、そして香港の2階建バスに絵を描いたりと、Josephineは規模が大きくてダイナミックな作品づくりが本当にうまいよね。日本は小さな作品が多いからとても新鮮。
Josephineが「ダイナミックさ」に価値を置いているのはなぜ?
南アフリカ、ケープタウンで携わったessieのプロジェクト
初めはiPadで描くデジタルイラストレーションからスタートしたの。そのうち自分の部屋の壁にペイントするようになって、気づいたら今のような大きな作品の依頼がどんどん増えた。
私は描く対象が大きければ大きいほど楽しいと思うタイプ。ビルの壁とか、みんなの目に留まる場所にダイナミックに描くのはいいよね。道を通りがかった人とか、色んな人が私の作品を見ることができるから。
アーティストとしての私の夢は、私の作品をできるだけたくさんの人に届けること。アートは人とのつながりを作れるものだと思っているから。
私の感情、気分、世の中に対する主張をアートの中に描く。そうすると、次は私の作品を見た人に新たな感情や気分、意見が生まれる。こうやってたくさんの人と繋がれるのは楽しいよ。
ー Josephine本人がそこにいなくても、アート作品を世の中に残すことで新たに人と繋がれる。強くてはっきりした意見があるJosephineだけど、作品もダイナミックなだけに、世の中に自分の意見を大きく伝えることに不安になったりしない?
自分に正直になることは、いつも大きな挑戦だと感じてる。特に、これまで自分が経験したことのない規模や新しい形式のアート作品に取り組む時は、不安がよぎるし。
でも、他のアーティストも初めての時はみんな不安に感じているんだと知って気持ちがラクになったかな。人として不安を感じるのは当然で、皆同じようなステージを乗り越えてるんだと知ったことは大きいね。
人間だからどうしても何か間違うこともあるんだけど、挑戦し続けて乗り越えるしかないと今は思える。
例えば、これまでに壁画に必要な塗料の色が違ったり、外で描くからコンディションが悪くて思うように進まない日もあった。そういう時は心配したり、余計な仕事が増えてイライラしたりもするんだけど、1日終わってみると別に致命的なことじゃないんだよね。
だからうまくいかない瞬間も含めてすべて学びだと捉えて、前向きに乗り越えてるよ。
ー さすがポジティブでハッピーな作品を描いているだけあって、前向き‼️アーティストとしての、今までに一番の思い出は?
本当にたくさんの素敵な思い出があるんだけど、その中でも去年届いた手紙がすごく印象的だった。
ドイツ在住のフランス人カップルからの手紙で、産まれたばかりの赤ちゃんに私の名前、Josephineと名付けたと書いてあったの。
このカップルは、赤ちゃんの名前を考えている時に私のウェブサイトを見つけて、明るくて元気いっぱいな私の作品を見て、娘にもそう育ってほしいと思ったんだって。それで私の名前をつけたと、感謝の想いが綴られた手紙だったの。
その手紙を受け取った時は、感動で涙が出たよね。直接会ったことのない人たちが、私の作品を見て、その後の人生を左右するような気持ちになってくれた。これ以上の褒め言葉はないと思ったよ。
ー それは感動🥹‼️Josephineのグッド・バイブスがちゃんと届いた証拠だね。
アーティストとしての次のチャレンジは?
これまでとは違うタイプの作品に挑戦したい。例えば、彫刻などの立体作品とかアニメーションとか。
今まで壁画やイラストが多かったから、次はもっと私の感情を深く表現できる手段を探してる。素材を混ぜるのもいいし、アイディアは尽きないね。
私が子どもの頃、自宅にあった工房でよく色々な素材を組み合わせて何か作っていたの。両親から色々試してみるように勧められてたし、その頃の実験的な試みをした体験が今のルーツになってるのかも。
今のイラストや壁画だけでなく、これからも色んな表現方法を使ってもっと自分を表現していきたいな。過去を繰り返すのではなく、新しいチャレンジを続けるのも私らしいから。
ー めっちゃいい話を聞かせてくれてどうもありがとう🥳‼️ siestaもCreative Studioという名前をつけたワークショップを時々開催してるんだけど、まさにJosephineと同じような考え。
これからの活躍も楽しみにしてます!また日本に遊びにきてね🇯🇵✨
Artworks by Josephine Rais (@josephinerais / Web site)
Interviewed by Natsuko